小さな公園のベンチに少しの隙間を残して二人で座る。
「私の家、お父さんもお母さんも厳しい人なんです。
家に帰っても二人とも勉強しろ勉強しろって、そればっかり。
ホント嫌になります。
みんなは家に居る方が楽って言いますけど、私は家にいると息が詰まるみたいに窮屈なんです。
家にいるのに必要な事以外しゃべらないからまるで家に一人でいるかのようにも感じますし。
勉強もやれって言われるからやってるだけで、やりたいこともないのにやってる意味はあるのかとか思っちゃいます」
「そうなんだ・・・。
苦労してるんだね」
「はい、まぁ・・・」
「やりたいことも決まってないのに勉強するって辛いよね。
僕もやりたいこと決まってなかったら今絶対勉強してないもん」
きっと仁と放課後遊び歩いてるんだろうな。
想像しにくいけど。
「ホントそうなんですよ。
あの、如月さんが前に言ってた夢ってなんですか?」
「んー、俺ね、N大に行きたいんだ」
「N大!?
あの医学で有名な大学ですか!?」
あー、やっぱりN大って言うとみんな驚くんだな。
仁に初めて言った時もすごく驚いてた。
「うん、俺医者になりたくてさ。
今必死に勉強してるんだ」
「医者に・・・。
すごいですね」
「いやいや、すごくなんてないよ」
「十分すごいですよ!
医者になろうって思ったきっかけとかはあるんですか?」
「・・・昔ね、妹がいたんだ」
「いたって、過去形ということは・・・」
「うん、もういないんだけど。
あのね、俺の妹、亜夏羽(アゲハ)って言うんだけど、小学生の時に不治の病にかかってそのまま帰らぬ人になったんだ。
亜夏羽はすごく元気な子で、何でこの子が?って思ってた。
で、亜夏羽がいなくなってから俺は妹の様に苦しんでる人たちを助けたいと思って医者になる決意をしたんだよ」
「そう・・・だったんですか」
話終わって彼女の顔をチラッと覗くと、一筋の涙が流れていた。
「な、何で泣いてるの?」
「え、あ、ごめんなさい。
何か話を聞いてると悲しくなってきちゃって・・・」
「・・・ありがとう。
亜夏羽の事を思って泣いてくれてるんだよね」
彼女の頬にそっと手を伸ばす。
「え・・・」
そのまま親指で彼女の涙をぬぐい取った。
「ありがとう」
笑いかけると、彼女の涙は止まったみたいだけど、かぁぁぁっと顔が赤くなっていった。
よく赤くなるけど、赤面症でもあるのかな?
「あ、あの、如月さん!」
「え、何?」
突然声を上げる西山さんに少しびくりと肩が上がる。
「わ、私、ナース目指します!」
「え?」
何で突然のナース宣言?
「私ナースになって、如月さんの良きパートナーになってみせます!
如月さんが風邪ひいた時は私が看病してみせます!
だから・・・」
若干早口になってる西山さんの頭にポンと手を乗せる。
「ありがとう。
えーと、じゃあお願いします?」
「・・・っ!
任せてください!」
何だかよくわからないけど、西山さんが何かに頑張れるようになってよかった。
ポンポンと彼女の頭を撫でる。
でも、パートナーになってみせるって言われた時はプロポーズされた気分になってしまって、少し嬉しく思ったのは内緒。



