「ゴボッ」


体の中の空気が全部外に出たのか、頭がボーとしてきて、視界もかすんでいく。


あぁそうか。


思い出した。


俺はあの日から泳げなくなったんだ。


泳いだら思い出してしまうから・・・。


これがトラウマというやつか。


あの後、結局健さんは帰らぬ人となってしまった。


俺はあの事故を、健さんを思い出さないようにするために、自分で記憶に蓋をして泳ぐのが苦手だと思い込むようになったのかもしれない。


でもそんなの、命を張って助けてくれた健さんに失礼じゃないか。


今の俺ならわかる。


あの時の記憶は蓋をして忘れるんじゃなくて、現実を受け止めて前を向いて歩かなきゃいけない。


俺は健さんに謝る前に、感謝しなくちゃいけない。


健さんを忘れるなて、1番しちゃいけないことだったんだ。


ごめんなさい、健さん。


それから、ありがとう。


沈んで行くのを感じながら、最後に俺は心の中で健さんに感謝の言葉を呟いた。


今回は誰も俺のこと見てなかったし、俺はこのまま終わるんだろう。


それでもいいかもしれない。


やっと、健さんに・・・会えるの・・・だから・・・。


















「夏芽!
死ぬなっ!!」