日はあっという間に過ぎて、気付けばもう夏休み。
そして、早速海に行くことになったんだけど・・・。
「おーい、夏芽!
こっちこっちー!」
「ごめん、少し遅れた!」
白いワゴン車の前で手を振る仁の元に駆け寄る。
「珍しいな、夏芽が遅刻なんて」
「昨日、今日の分まで勉強してたんだ。
それが気付いてたら夜中になってて・・・」
「うわー・・・。
夏芽今年も一日中家にいるつもりか?」
「そうしたいけど、どうせ誘いに来るんだろ?」
「おっ、わかってんじゃん!」
「まったく」
去年だって夏休みの間ずっと一日中家にいたってわけじゃない。
夏休みの三分の一くらいは仁に誘われて出かけてる。
今年だってどっかに誘うつもりだろう。
毎年同じような感じなんだから、わかってくるようになるはずだ。
「それにしても、伊達先生が車出してくれるなんて珍しいですね」
ワゴン車の傍に立って背中を預けながらタバコを吸う先生を見る。
「あぁ、まぁ俺も本当は行く気なんてサラサラなかったのにこいつが・・・」
キッと睨むその視線の先にいるのは仁だった。
「やだなー、先生。
俺だって先生を誘った覚えないですよ?
何で付いて来たのか謎です。
ま、運賃代払わなくてすむからラッキーですけど」
いつもの仁と比べ、かなりの皮肉を言っている。
まぁ、この光景ももう珍しいことではない。
理科の先生、伊達蒼汰は仁の家のご近所さんで、幼馴染とも言える存在らしい。
仁がこの高校に入学した頃はすごい仲良が良かったけど、最近皮肉を言いあったりいがみ合ったりして、ケンカばっかりしてるっぽい。
で、その原因が・・・。
「あら、如月くんやっと来たのね」
「あっすいません、遅れちゃって」
ワゴン車の窓を開けて顔を出すその人は、優しく笑っていた。
そう、先生と仁がケンカばかりするようになった原因の人。
保健の美奈子先生だ。
どうやら伊達先生も美奈子先生に惚れてるらしい。
仁が言うにはだけど。
だから”俺たちはライバルなんだ!”とも言ってた気がする。