「ま、頑張れよ、少年」
「そういう仁は好きな人とかいんの?」
「俺?
そりゃあいるよ、一人ぐらい」
「へー」
仁でも恋とかするんだ。
「誰?」
「教えない」
「何で?」
「ぜってー笑うから」
「笑う?
好きな人聞いて?」
笑うって、よっぽど手の届かない存在か、二次元か、変人・・・?
「笑わない」
「・・・ホントか?」
「うん、神に誓う」
「よしっ。
あのな、俺の好きな人は・・・」
ごにょごにょと耳元で小さく言われる。
「はぁ!?
みなっ」
「声が大きいバカっ!」
「わ、悪い・・・」
ゴホンと咳払いをして小声で話す。
「で、本当にその人なの・・・?」
「あぁ。
超っ!俺のタイプ!
マジどストライクって感じ!」
「ふーん」
まさか仁の好きな人が保健室の美奈子先生とはねー。
まぁ、確かにあの人まだ23らしいから結構若くて親しみもあり、先生や生徒からも慕われてるっていうのは聞いたことあるけど、生徒と教師だったらなー。
「ほぼ不可能じゃない?」
「何が?
付き合うの?」
「うん」
「いや、俺は諦めない!
何があろうともあの人と恋人になってみせる!」
「へー、まぁ、がんばれ」
「お前が一番がんばれって!」
「はいはい」
仁の言葉に軽く返事をして聞き流す。
こんないつもと同じような昼休憩。
俺は卒業するまでずっとこのままだと思ってた。
けど、未来なんて誰にもわからない。
今この瞬間誰かが転びそうになってるかもしれない。
後十分後には授業が始まると同時に誰かが寝るかもしれない。
この先、俺が誰かと恋に落ちるかもしれないとか。
未来なんて、誰にもわからないんだ。



