「おーい、夏芽ー」


「んー?」


授業が終わった後、親友の本城仁(ホンジョウジン)が弁当を持って、俺の前の席のイスに腰掛けた。


「弁当、食べようぜ」


「あー、今食欲ないんだよねー」


夏の暑さで食欲がわかないのか、ここ最近草食になってしまった。


「何?恋の悩みとか?」


「た、ただの暑さのせいだよ!」


仁はハハハと意地悪そうに笑いながら弁当のフタを開ける。


まったく、俺が恋愛苦手なの知っててこういうことを言い出すんだから。


困ったものだ。


「で、夏芽恋しないのか?」


「まだその話し続いてたのか!?
・・・しないよ。
俺には恋なんてものよくわからないし、まずそういう存在が周りにはいない」


「はぁ?
それ本気で言ってんの?
いるじゃん、生川とか松宮とか」


「あれは友達だろ?」


「つまり女として・・・恋人としては見れないってことか」


「うん」


「お前も難しいねー。
理想が高いんじゃねぇの?
好きなタイプ言ってみ?」


モクモクと食べる仁にタイプを聞かれて、カバンから出したいちごミルクを机に置いて考えてみる。


難しいな、タイプって。


「・・・明るい子、かな」


「え、それだけ?」


「え?」


聞かれたのに反応が薄くて逆に聞き返してしまった。


仁は箸でミートボールを摘んだままキョトンとしたような顔をする。


「おまっ・・・それは少なくね?」


「少ないって?」


「もっとこう、可愛い子とか、優しい子とかさー。
いろいろあんべ?」


「だって頭に浮かんだのがあれだけだったから」


「明るい子とか、そこら辺にいっぱいいんじゃん」


「そうだけど・・・」


恋人にするとなると、誰もピンとこない。


やっぱり俺は恋愛なんて向いてないのかもしれない。