夏と冬



「あ、あの!」


「ん?」


さっきまで俺の質問だけ答えていた彼女が、自ら話しかけてきた。


正直ちょっと助かる。


そろそろ質問のネタも尽きようとしていたところだったから。


俺は彼女の声に耳をかたむけた。


「あ、あの…。
思い出しませんか?
私のこと…」


思い出す?


彼女のことを?


何処かで会ったことあるっけ?


でも名前も初めて聞くし、1度会ってるなら顔も覚えてるはずなんだけど…。


「ごめん。
俺たち何処かで会ったことあるっけ?」


「覚えて…ないんですか…」


あからさまに落ち込んだ様子だ。


あぁ、なぜか罪悪感が!


でも、彼女に会うのは初めてなはずなのに、初めてという気がしない。


本当に何処かで会ってるのだろうか?


俺が思い出せないだけで…。