夏と冬



どうしようか。


参考書はこの前買ったばかりでお金ないから新しいの買えないし…。


真っ直ぐ帰ろうか。


校門を出かけた時、彼女と目が合った。


「「あっ」」


声がキレイにハモる。


「如月さん…、今から帰るところですか?」


「うん、西山さんも?」


「あ、はい。
まぁ…」


「そっか、気をつけてね」


そう。


こういう場面とかでこの言葉を使うのが一番あってると思うんだ。


俺が言えたことじゃないけど、仁に教えたいぐらいだ。


「じゃ…」


「あ、あの!」


「ん?」


動かしかけた足を止めて振り返る。


視線は下を向いていたけど、ぎゅっと鞄を握りしめている彼女の姿があった。


「えっと、あの…。
い、一緒に帰りませんか?」


「え?」


「あっ、やっぱりいきなりこんなこと言われたら迷惑ですよね!
すいません!」


「いや、別にいいけど…」


「え!?」


「一緒に帰るんでしょ?
どっか寄る?」


「え、え、いいんですか?」


「うん、俺も今日1人だったから」


「あ、ありがとうございます」


「こちらこそ。
じゃ、行こうか」


「はい!」


隣に並んで歩き出す。


あ、お金足りるかな…。