夏と冬


次の日、今日もいつもと変わらぬ日々がやってくる。


そう思ってたんだけど・・・。


「夏芽ー!」


「おはよう、仁」


「おっすー!」


今日もドンっと体当りしてあいさつを交わしてくる。


いつもなら少しよろつく程度だが、今日に限ってバランスを崩してしまった。


「うわっ!」


「キャッ」


・・・キャッ?


ドーンと地面に尻もちをつく。


「いててて・・・」


「わ、悪い夏芽!
そっちの子も大丈夫?」


「あ、はい。
なんとか・・・」

ハッとしてすぐさま起き上がり、巻き込んでしまった子に手を差し出す。


「ごめん、ケガしてない?」


「だ、大丈夫です」


可愛らしい声の彼女は、俺の手を素直に受け取り、握り返して立ち上がった。


「よっと。
ホントごめんね」


「どこもケガしてないみたいですし、気にしないでください。
これからは少し気をつけた方がいいかもしれませんね」


巻き込んで転ばしてしまったというのに、彼女はにっこりと笑って校舎に入っていった。


「なんか、いい子そうだったな。
さっきの子」


「そうだね」


でもどこかで会ったことがあるような・・・。


メガネに黒髪ロングの女の子・・・。


まぁ、そんな人あっちこちにいるだろう。


ただの気のせいかもしれない。


特に深く考えることもなく、俺は仁と一緒に校舎に入った。



先に校舎に入った彼女の頬が赤く染まっていることも知らずに・・・。