母の最後の言葉が今でも耳に残ってる。
『自分が1番好きなことができる場所を見つけられるように』
そう言って私に渡したピアス。
今でも身につけていることは誰かが知ることはない。
初心を忘れることほど怖いことはない、と誰かが言ったものだ。
私の初心は・・・なんだろう。
始めたばかりの頃、私はどう思ってた?
ただ純粋に楽しんでた?
わからない……わからない。
私の心は今どこにあって、どこに向かってる?
*
「初めまして。千と申します。どうぞお千と呼んでください」
こちらこそよろしくね、と軽く頭を下げる。
新しい女中、と言われた子はとても可愛らしくて、どうして新撰組なんかに来て働くのか理解できなかった。
家事全般できるようだし、私が教えるまでもないだろう。