「はい。では朝餉の準備がありますので」
軽く礼をして、土方の部屋を出ると、勝手場へ向けて歩き出す。
今日の朝餉は何にしようか。
そんなことを考える。
ようやくこの時代の勝手に慣れてきた。
こうして家事をしていると、亡くなった母の事を思い出す。
アイドルになる前は母が作るご飯が好きだった。
デビューしてからは、仕事、仕事、仕事・・・・・。
・・・今さら何を考えているんだろう。
もう私はあの世界の住人ではなくなったのに、どうして思い出す・・・?
そうだ、私は“ 唄”が好きだったじゃないか。
スカウトされたときだって、それを唄っていたときだ。
デビューしてからは1度もそんなことはなくて、息が詰まっていた。