「あなたは・・・・・誰」
私の問いに、声の主は答えてはくれなかった。
────彩音、あなたはあなたのするべき事をなさい。
それと・・・・・ここの人達を、信じてみて。
それから、声は聞こえなかった。
「なんで・・・・・」
気づいたら立ち止まっていたようで、私は振り返って1度深呼吸をした。
“信じてみて”なんて・・・・・どうしてあの声までそんなことを・・。
「・・・・・行こう」
とりあえず歩こう。
何も考えたくない。考えないために、歩く。体を動かす。
しばらく歩いていると、自分の部屋に着いた。
襖を開ければ、女とは思えないほどの殺風景な部屋。
男の部屋と言われても納得してしまうかもしれないほど、この部屋には何もない。



