*
行き先もなくただひたすら廊下を歩く。
部屋から出る時、微かに見えた土方の顔が頭から離れない。
あの、悲しみに満ちた表情が。
何故・・・・・鬼の副長ともあろう者があんな表情をするのか、何故頭を下げてまで私に謝罪をしたのか。
「なんで・・・・・こんな」
胸がざわつく。意味もなく、こんなにも。
謝られることに・・・・・慣れていないから?
他人に謝られることは、現代ではまずなかった。
むしろ私が謝ることが多かった。
学校でも、そんなのはありえなかった。
「うそ、うそだ・・・・」
嘘に決まってる。そう自分自身の心に必死で言い聞かせる。
“人を信用しないこと”
私の座右の銘を崩さないために。



