「なんで前川邸に行っていた?」
「特に理由はありません。することがなかったので前川邸の方の庭を掃除していました。」
嘘ではない。
私は仕事が全て片付いて、夕餉を作る刻まですることがなかったので、今まで全く足を踏み入れたことのなかった前川邸へと行き、庭の掃除をしたのだ。
芹沢に会ったのは想定内の範囲だ。
前川邸を探索するため、といってもいいかもしれないが。
「……まぁいい。これからは前川邸には行かなくていい。八木邸のほうにだけいろ。仕事もすべて八木邸で行うようにしろ。」
「わかりました。ちなみに、その理由は?」
「お前には関係のないことだ。知る必要はない。」
「そうですか。」
関係ない、ね……………。
隠したところで、私は全て知っているのだから無意味だ。
おおかた、私を芹沢一派と関わりを持たせないためだろう。
私は芹沢にとくに興味はない。
そのため、出入りを禁じられたのは好都合といってもいいかもしれない。