「君を疑えば疑うほど、僕等は損をしている気がしてね。調べたけど、君のことは何一つわからないんだ。所在も、家系も、全て。これが意味することは何だと思う?」
「…………偽名を使っている、と?」
「そういうこと。向日葵という名前は偽名じゃないかって、僕等は思っているわけだ。でもそれを確かめる術はない。だから直接君に聞いたほうがはやいでしょ。」
「そんな素直に私が答えるとでも?」
「思わないよ。だから少し罠を仕掛かけてみたけど……………どうやら引っかかってくれなかったみたいだね。」
先程の言葉はやはり罠だったようだ。
私はそんな罠にやすやすと引っかかりはしない。
するはずがない。
「………私はそんなにやすやすと引っかかりはしない。私をはめるなら、もう少し複雑でなおかつ解りにくい罠を仕掛けるべきだったわね。」
「それは、なにかうしろめたいことがあるということの発言かな?」
「いいえ?私のことを知りたくても、いくら調べてもわからないと思うけど?だって私は……………」
そこまで言って、私は言葉に詰まった。
今までいろいろな人に嘘をついてきた。
それはテレビの前の人であったり、身近な人であったり。
決して本心を見せないように、と。
それなのに今、私は自分のことを話そうとした。
どうして、こんな人達に口が滑ったのか。
どうして、少しでも緩ませてしまったのか。
どうして、どうして……………