「この浪士を倒したの、君?」
この青年、全て見ていたのだろうか。
確信付いた目でこちらを見てくる。
「…そうですけど、なにか。」
「ちょっと僕らと一緒に来てくれない?」
「ご遠慮します。」
「君に拒否権はないよ。」
「お断りします。」
「そ、じゃ仕方ないかな。」
私は反対方向に歩こうとした。
けれど、青年は私を軽々と担ぎ上げた。
勝手に。普通にありえない。
拒否権ないってどこにいる俺様なのか、と心の中で苦笑いする。
というより、これからどこに連れていかれるのだろうか。
『新撰組』の屯所だろうか?
撮影でそんな言葉を聞いたことがある。
それにしても、連れて行って一体私をどうする気なのだろうか。
拷問か?それとも、事情聴取なるものか?
とちらにせよ、面倒くさいことには変わりない。
ここはひとつ、大人しくしていることにするか。
しばらくして、誠の旗が掲げられている新撰組らしき屯所についた。
表札のようなものには、『壬生浪士組』となっていた。
まだ新撰組にはなっていないようだ。
芹沢鴨が生きている時代、ということは文久三年あたりだろうか。



