「お前、気づいたの?」
「うん。さっきね」
「やーべー。恥ずかしいや」
いつも彼女が出来たら自慢してた奏が、真っ赤になって髪を掻いている。
なんだか、それだけでも、違和感があるというか、不思議な気分だ。
奏と目が会った瞬間、とてつもなくピリリとした甘酸っぱい気持ちが胸を支配した。
まるでまだ片思いしているような、気持ち。
あんなに真っ赤になっているのは、本当に私への気持ちなのだろうか。
嬉しい。でも何だか怖い。
ずっと背中を見ていたと思った奏が、こうして振り返って私だけを見ているんだもん。
「着いた。着いた」
子どもの時は遠く感じた幼稚園への道。
でも私たちには、ほんの十数分。
下手したら、コンビニに行くよりも近いかもしれない、距離。
ゆっくりと小さな足幅で此処まで歩いて来たんだ。
幼稚園は、壁際に工事の道具や機材が置かれ、園舎の周りの花壇などは取り払われていた。
子ども達の、――奏と太一の笑い声が聞こえてきそうな、懐かしさを閉じ込めた空間に、ノスタルジックな不思議な気分が生まれてくる。



