「……お前、グローブとボール持って行くのかよ」
歩きはじめたら、少しだけ沈黙が生まれたけれど、それを破ったのは奏だった。
「壁打ちぐらいはしたいからな。お前は、単語帳ぐらい持ってきたら良かったのに」
「うるせーな」
クスクスと笑った私は、二人の少し後を歩く。
幼稚園までのコースは、坂を上がって、交差点を曲がればすぐに着く。
行き帰りに、先生が送ってくれる『歩いて帰るコース』だったから、親たちが待つ集合場所まで、先生と四人で帰っていた。
確かこんな風に私は先生の横で、二人は並んで歩いていた。
手を繋ぐお約束を嫌がる奏と、真面目に手を繋ごうとする太一は、よく無言で睨みあっていたっけな。
「何笑ってるの?」
奏が振り返って私を見た。
「いや、手、繋がないのかなって」
クスクスと笑うと、奏も太一もきょとんとする。
「今日は、太一がお約束守らないように、両手にグローブとボール持ってるんだぜ?」
「じゃあ、お前らが繋げよ」
太一がにやりと笑うと、奏の顔がボッと赤くなった。



