「駄目じゃない。見に来たら」
クスクスと笑う、ポニーテールをして深く被っていた帽子を脱ぐ。
美緒ちゃんも深めに被っていた帽子を脱いだ。
「ほら、今投げているのが太一よ」
「へ?」
「三対0で浜松勝ってて、ここで打たれなかったら終わり。今2アウトだよ」
あ、だから歓声が上がったのか。
二人もニコニコしているのは、もう勝ちが分かっているからなんだ。
じゃあせめて太一の雄姿だけでも、見て帰ろうかな。
此処から目を凝らして見ると、どうやら私はライトの真ん中ら辺にいるみたいだ。
遠くの太一の横顔が見える。
野球は、ルールもよく分かってないのに、
太一の投げるフォームは綺麗だと思った。
凛とした、真っすぐな目で、あの速い球を投げているんだ。
バシッ
グラウンドがしいんと静まり返り、太一の球の音だけが響いたと思う。
時間にして数秒。
ワァァァァ――
すぐに静寂は歓声で隠れた。



