じめっとした、服が肌に貼りつくような湿った六月。

体育館中の窓を開けても、風が入って来なくて、皆もなんとなくだらだらと練習している。

そして、とうとう体育館の水飲み場にもナメクジが発生し始めて、悲鳴を上げてしまった。


仕方なく、職員室の給湯室を借りて、みんなのコップを洗う。


「今年も高校野球の時期ですねぇ」

「隣の浜松高校でしたかな? もう地方のテレビ局がインタビューしに来てましたよ」


「ああ、浜松のキャプテンは古き良き日本男児みたいな、凛々しい子だったね」


ぷっ
先生たちの話が面白くてつい噴き出してしまった。

「ん? どうした? 崎谷」

皺だらけの顔で私をみるおじいちゃん先生に苦笑いをした。


その古き良き日本男児は私の幼馴染なんですよ。

しかも、今から会うんです。


そう言いたくて、なんだか胸の中がくすぐったくて、曖昧に笑って先生から逃げ出した。

いけないいけない。早く行かなくては。



洗ったコップを拭いて、部室の隅っこに干し終わると、バタバタと鍵をかけた。



「おーい! 深雪!」

「げ」


駅に向かって走り出そうとしたら、奏に声をかけられた。