「おーい、買ってきたぞー」
両手いっぱいにペンキ筆を持った奏が走って来るので、二人で顔を見合わせて笑った。
少しだけ水を入れて伸ばしたペンキは、よく伸びた。
ヒビが入った灰色の壁を、青空のように塗って行く。
奏の頬に青空が付くと、奏は太一の頭に青空を付けた。
付け合い、逃げあう二人は、まるで小学生、――いやあの頃の子どもに戻ったように、無邪気で馬鹿で。
私は声を隠さずに笑った。
確かにあの頃には戻れないとか、変ってしまったと腐ってしまったけど、
変ったんじゃなくて、成長して心は広くなっただけで、
あの頃の記憶は忘れていないし、まだ心の一部にあるんだ。
こうやって簡単に記憶は思い出される。
二人のおかげで。
ちょっぴり胸が痛むのは、ペンキで塗られた空よりも本物の世界は広くて、
視野や選択が広がるから、離れたように感じること。
だから、好きだって気持ちを伝えて、広い世界の中、一緒に居たいって思うのかもしれない。



