鬼神と少女

「すいません、こんな粗末なもんしか用意出来なくて…」

明海はテーブル(冬はこたつになる)にお茶とおやつに食べようとしていたチョコパイを恭輔に差し出した。

「いえ、私も突然来てすいません。あ、チョコパイですか、私大好きなんですよ」

30歳くらいだろうか。

それより鬼でも最近の菓子を好むのか、と明海は思った。

「和菓子とかあれば…」

「いえ、和菓子より洋菓子好きなんで」

「鬼に洋菓子…」

何かことわざでも作れそう。

鬼というわりには人に化ければ優しそうな(言い方悪くすれば気が弱そうな)感じがしていた。

「そういや用意って…」

明海が恭輔の向かい側に腰掛けると、恭輔はチョコパイをむぐむぐ食べながら話し出した。

「神隠しの件で私たち出会いましたよね?実はあそこ毎年外部から遠征で合宿に来る学生が多いんですけどね、毎年必ずって言っていいほど神隠し起こるんですよ」

「…毎年…?…毎年に何人くらい…?」

「…1人~3人ですかね…」

神隠しに遭った明海の部員、小武茂。
神隠しの記憶はなく気づいたら病院のベッドだったという。
ちなみに現在は普通に大学生。


「小武さんは…あのとき奇跡的に生きておられたのですが…見つからないままというケースも増えてます」

「…町の人たちとかは…何か」

「あそこちょっと外部との接触をしたがらないんですよね」

明海は少しだけ記憶を合宿の頃に戻って思い出させた。