鬼神と少女

待てよ、この人確か人じゃなかった。

私があのとき…

人間じゃないことを気づいたせいでその人(?)の正体を知ってしまった高校2年の夏。

「あのときの…」

4年間ずっと忘れていた。

「鬼…さん…」

人の姿をしているが、間違いなくこの人の正体は鬼だった。

けれど恭輔は動じることなく穏やかに言った。

「あれからお元気か気にかかってました。実は用があってここを訪ねてきたんですが…」

「用…?」

明海はとりあえず玄関のドアを開けることにした。

「…お久しぶりです」

ドアの外には半袖ワイシャツに黒のズボンというサラリーマンと同じような格好をした恭輔がいた。

それに比べて明海はジャージだった。

「あの…上がります?」

「あ、いえ大丈夫です。一人暮らしの女の子の部屋に上がるのは…」

「でも話が長くなりそうだし…ここで話してたら鬼ってまたバレますよ?」

「…そうですね…じゃあ少しだけお邪魔させていただきますね」

奥二重のつぶらな目が優しく細くなった。