「セイ!」

「ん?」

「私は良かったって思ってるよ。」

「はあ?」

「私以外の大切に思える人がセイにできたこと」

「私以外とか、図々しいなお前」

「あはは、そっかな、でも、ちょっと心配だったから、

私にとって、セイは大事な人なんだよ。

だけど、兼ちゃんとは違うの。

セイのきもちわかってても、答えられない。」

判ってきても改めて言われると、

きりりと胸が痛む。

「今さらだろ?」

俺が笑うと、

ちょっと安心したように笑った。

低い鼻、小じんまりした目。

とても美人とはいえないコイツが、

何でこんなに気になるんだろう。

日本のことわざで、なんて言ってっけ?

『蓼食う虫も好き好き』


こいつが笑顔なら俺は何も望まない。


そう思えるようになるまできつかったけどな。



空を見上げると、雲ひとつない青空。

変な縁で結ばれた俺とコイツと、それからアイツと妹。

俺が留学を一年延長してまで欲しかったものは、

決して手に入らなかったけど、

それでも、

日本の普通の高校生として過ごしたこの2年は俺の人生で宝物だ。


もうすぐ帰るハワイの空とは違う薄い青空も、

そろそろ見られなくなるんだなと持ったら、少しだけ、淋しい気分になった。


俺の容姿を見て天使なんて言うやつがいるけど、

いっそ背中に羽があったなら、いつでもここに舞い戻ってこられるのに。

「ははっ」

あり得ない妄想をしている自分に苦笑いした。

そらこの病気が移ったのかな。