「…………離れよ」


「え?」



小さく、小さく。


本当に消え入るような、か細い声でつぶやいた。



あたしの言葉なんて、桐谷くんに聞こえてなければいいのに……。



「桐谷くんのそばにいるの、やめる」



「……は?」



「ごめんね。迷惑かけて」



それだけ言って、振り返る。



「ちょっと待って……。急に何言ってんの?」



だけど桐谷くんは、咄嗟にあたしの腕を掴んだ。


逃げることを阻まれ、心の中の葛藤は、行き場を失う。