「桐谷くん、お願いです。バスケ、もう一度して下さい」
折原奈乃が、頭を下げて俺に頼んできた。
「…………」
俺は、目を閉じてうつむく。
……もう、大丈夫。
左耳から、友情の証と称されたラピスラズリを取り外す。
これを罪悪感としてつけている意味は、たった今なくなったから。
いや、昔からずっと、なかったんだ。
なのに俺は、わざわざ耳に穴を開けて、それを罪としてここにはめて背負ってきた。
徹がそんなヤツじゃないってことはわかってたのに。
ただ、俺がそうしないと気が済まなかったんだ。
だってそうだろう?
大事な唯一である親友を、あの日、思ってもない言葉で傷つけて、裏切って、逃げて……殺してしまったんだから。
俺は、許されるべきでない人間だ。
なのに、そんな俺を許してくれる人が……認めてくれる人がいた。
……こんな俺のことを、好きだって……必要だって……。
なぁ、徹。
俺、その子のために、もう一度バスケをしてもいいか?
お前との約束、ちゃんと果たすから。
『当たり前だろ!?俺ってやっさしぃー!思いっきり、楽しんでやれよ!』
まぶたの裏に、親友の笑顔が思い浮かぶ。
……きっとあいつは、笑ってそう言うんだろう。