怖くなって、俺はギュッと拳を握りしめてうつむく。
……無理だ、俺には。
ピアスをはめている左耳が、重たい。
徹が好きなバスケを、徹がこれからもするはずだったバスケを……奪った俺が、ひとりのうのうとできるはずないだろう。
ああ、まただ。目の前が霞む。
真っ暗闇で、なにも見えなくなる。
うつむくことしかできない。
「……桐谷くん!!」
そんなときだった。
ふいに、俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
見ると、ギャラリーを掻き分けて誰かがグイグイとこちらに向かってやってくる。
誰かといっても、いつもと変わらずデカイ声で、スッゲー息を切らして、俺のもとにやってくるヤツなんて、ひとりしかいないけど。
「……奈乃!」
中野は驚いた様子で、息を切らして走ってくる折原奈乃を見る。
だけど折原奈乃は、誰にも目もくれず、ただ俺だけを見つめて、ここへやってきた。
その距離が残りわずかとなると、勢い余るように足で地をけって、俺の両腕をガシリと掴んだ。
「桐谷くん!やっぱり桐谷くんは、バスケをしなきゃダメだ!!」


