「桐谷くん、去年の球技大会の時期もよく保健室に来ていたわ。頭が痛いとか言って……」
そう言えば、と、思い出すように言った保健室の先生。
そうだったんだ……。
当然だけど、初めて知った。
「担任の先生はこのこと知らないだろうから、私は職員室に行って伝えてくるけど……。あとは任せていいかしら?」
保健室の先生の言葉に、あたしも松岡くんもこくりと頷く。
先生が部屋から出て行くと、静寂な空気がこの空間を包み込んだ。
それと同時に、あたしはうつむいて身を縮める。
「1番近くにいたのに、助けられなかった……」
悔しい。
どうしてあたし、もっと早く手を伸ばさなかったんだろう。
後悔の念に押しつぶされそうになっていると、力の入った肩に、ポンッと優しく手を置かれた。
「それは俺も同じだから。 奈乃ちゃんのせいじゃないよ。
おもしろ半分で嫌味なことしてきたあいつらが悪い」
松岡くんの言葉のおかげで、少しだけ心が軽くなる。
だけど、胸の内に引っかかるあの男子生の言葉が、ずっとこだましてそれを邪魔をする。