「……何?」
くるりと振り返り、あたしを見るなり立ち止まってくれた桐谷くん。
「もしかして移動教室?桐谷くん、教室戻るんだよね?」
「普通に考えて一緒のクラスだしわかるでしょ」
「えぇぇ!! 一緒のクラスって、照れるなぁ!」
「……なんかあんたって、たまにめんどくさいよね」
言われ慣れてる無遠慮な言葉。
だけどあたしのハートにグサッとくることはない。
……だって、ね。
「山積みされてて重そうだね。それ」
「そうかな?でも全然平気だよ!」
「お人好し」
「えぇぇ!桐谷くんに褒められた!どうしよう!」
「…………めんどくさ」
こうやって自然に隣を一緒に歩けちゃってたりするし、
歩幅もたぶん、あたしに合わせてくれてる。
「やっぱ、危なっかしいからこれだけ預かる」
ヒョイっと片手で取られたふたつの筆箱。
「えっ!?重たいよ!大丈夫!?」
「普通に筆箱預かっただけじゃん。どんだけモロいの俺」
ふっと笑ってあたしのと舞ちゃんの筆箱を持ってくれた桐谷くんに、胸がキュンってする。
言葉とは裏腹に、態度や行動がとても優しいんです。桐谷くんは。


