我慢しようとすればするほど、目の奥が熱くなって、鼻の奥がツーンとしてきて、とうとう鼻水が垂れてきてしまったのだ。
〝あ、やべ。〟と、普通の人間なら、この垂れてきた鼻水をどうする?
……そう、吸うのです。
あたしは生理的に、ズルズルーっと鼻をすすってしまった。
だけどすぐに気がついた。
これぞホントの、〝あ、やべ。〟
ちなみに〝綾部〟でも、〝あ、矢部〟でもない。
奥で背を向け立っている桐谷くんの肩が、ピクリと動いた気配がした。
「……泣いてんの?」
久々に聞いた、桐谷くんの優しい声。
それだけのことで、胸が熱くなるのを感じる。


