「…………。 何?」
振り返ることのないまま、桐谷くんは足を止める。
「桐谷くん。もしかしてあたしを避けてたのって、阿部さんに嫌がらせされないようにするためですか?」
数秒の間のあとだった。
「……違うけど」
ため息と共に、冷たく放たれた言葉。
だけど、いつもポーカーフェイスの桐谷くんの嘘を見破ることは簡単だった。
……だって彼は、とても優しい人だから。
歩き出す桐谷くんのあとを、あわてて追いかける。
……部屋に戻るのだろうか?
だけどまだ、あたし、こっちを向いてもらってない。
お願い桐谷くん……あたしを見て。


