桐谷くんはそのまま、阿部さんの手から強引にあたしのポーチを奪い返す。
あたしは無意識のうちに、背を向けている桐谷くんのいるもとへ向かっていた。
阿部さん達は、桐谷くんの後ろにいるあたしの存在に気づく。
桐谷くんも、その視線を辿るようにあたしの方へ振り返って……
そして、驚いた表情を見せた。
「桐谷くん……」
大好きな彼の名前を呼ぶ。
……どうして気づかなかったんだろう。
桐谷くんは優しいから、あたしが嫌がらせされないようにわざとあたしを避けていたんだ。
そういう人だって、知ってたはずだったのに……気づけなかったあたしは大バカ者だ。
ねぇ桐谷くん、あたしそんなのいらないよ。
そんなポーチ、別になくなったって構わない。
嫌がらせされなくなっても、桐谷くんと話せなくなる方が、もっとイヤだ。
あたしは強く、阿部さん達を見据えた。


