刹那、後ろを向いているのに背後の様子が手に取るように判る。
まるで、ノイズの様に黒い影が階段を下り始めた。
階段を一段と一段と下るにつれて、
黒い影が人の形になっていった。
それは、徐々にうつむき加減で下りながら、
一段ごとに、顔を上げていった。


ヤバい
と思った私は連れの彼女をみた。
彼女の顔は、
青ざめて居た。
「あのさあ、見えてる」
私がそう問い掛けると彼女は、コクンと頷き。
「女が降りてる…」
と呟きガタガタと震えだした。
彼女がガタガタと震えだしたとたん、
階段の女の速度が上がった。
一気に半分位降りて来ていた。
そして、徐々に顔が見え初め…ゆっくりと顔を上げ出した。
頭に危険を知らせるサイレンが鳴る。
見たら駄目だ…
私は女を止める方法を考えた。
ウエストポーチ
ウエストポーチはどこにやった
お地蔵様…
お地蔵様だ
私はお菓子を持って振り返ると、お地蔵様の元に走った。
お地蔵様の赤いエプロンの下の器にお菓子を乗せると、一心にお地蔵様にお願いした。
お願いしてる間、女が髪を振り乱しながら、近付いて来た。私を掴もうと手を伸ばしている。
頭の中で逃げたいと思ったが、何かが引っ掛かった。
お地蔵の所に沢山の白い石があった。
私はそれを一つ掴むと階段に置いた。
そして無我夢中でウエストポーチをあった場所に戻した。
そして、ガタガタ震える連れの彼女の腕を掴むと走って逃げた。
途中まで、下山して私は階段を見た。
女がお地蔵様の横の石を投げた場所で立ち止まっている。
どうやら、お地蔵様が願いを聞いてくれたようだ。
私は安心した。
そして有り難うお地蔵様と心で祈った。
駐車場に戻ると、連れの彼女がポツリと呟いた。
「あの女私を見てい
た…」
「そんな事ないよ
大丈夫、お地蔵様助けてくれたから。」