あまり人の顔を見ない方だ。
だからモンタージュ作りは無理。
なぜかなんて
今まで考えた事はなかった。
自分がみえるって自覚するまでは…。
田舎町のバス停で昼間にバスを待つのはなかなか少ない。
私も1人で、時間通りに来ないバスを待っていた。
暑い夏…サンサンと降り注ぐ太陽。
その熱を照り返し続けるアスファルト。
最悪に暑かった。
アスファルトの陽炎と暑さが合わさって眩暈がする。
その瞬間、耳鳴りがした。
キーン
続く不快な音。
私の体がヒンヤリとした空気に包まれる。
横に、つばの大きな帽子を被った、赤い服の女が立っていた。
女はなぜか、私の横にピッタリと立つので気味が悪かった。
こんなに広いのに、なぜ
なぜか判らないけど私の体は動いた。
「どうぞ」
言葉と共に私は自分が立っていた場所を女性に譲った。
自分でもなぜかは判らないが、そうした方が良いと思ったからだ。
女が無言で頭を下げた。
私は、笑顔で頭を下げ返そうとした瞬間、目の前にバスが止まった。
バスのドアが開いたのを見た私は、先程の女性に
「お先にどうぞ」
と言おうとしたが、
そこには誰もいなかった…。
数日後、バスに乗っていた私は、学生服の少年の横でピッタリくっ付いた、あの女性を見掛けた。私の時と違い、その女性は学生服の少年に腕を絡めていた。
バスがバス停に止まって、ドアが開いても少年はバスに乗らなかった。
バスの運転手が不愉快そうにバスのドアを閉めた。
瞬間、
少年が青ざめた様な顔で私を見た…。
彼は掴まった…
そう思った瞬間
私の背筋が寒くなった…。
その後、そのバス停 に人が立って居るのを見なくなった。
皆、次のバス停でバスに乗るからだ。