身代わり王子にご用心





これが出来る人なんて一人しかいない。


頭だけを動かして周りを確認すれば、棚に引っ掛けたランタンが照明となってよく見える。


何気なく視線を動かして、ドキッ、と心臓が跳ねた。


淡いブルーグレイの瞳がこちらを向いていたから。


高宮さんは昼間と同じスーパー店員の格好でいたけど、背筋は伸びてメガネも外してる。


彼は棚を背に預けて足を組み、こちらをじっと見てる。な……なんだろう? 見ても楽しいものじゃないと思うけど。


「……アンタさ」

「は、はいっ!?」


静かな中で唐突に話しかけられ、思わず背筋を伸ばす。イモムシ状態だから、あんまり変わらないけど。


「その夢、いつから見てる?」

「……え?」


高宮さんの発した質問の意図が、私の頭ではすぐに理解出来ずにいて。

たっぷり数十秒経った後、私が発したのは「なんで?」だった。