「……本当に、すまない。桃花……だが、オレはもうおまえを手放せない」
カイは頭にキスをすると、そのままでは辛いだろう、と近くのベンチに導いてくれる。座る前に持っていたクッションを敷き、膝にハーフケットを掛けてくれた。
そしてカイは私の前で膝を着き、私の両手を取って自分の大きな手で包み込んだ。
「今だって……おまえが初めて叶えた夢を、途中で諦めさせるように懐妊させてしまったが……どうしてもあなたが欲しかったんだ」
ドキン、と心臓が跳ねる。
カイが初めて私に懇願するような、すがるような眼差しを向けてきたから。
「本当の私は臆病なんだ。いつも不安でいた……だが、あなたがいれば。あなたが支えてくれれば何倍も強くなれる」
そして、カイはスーツのポケットから一つの小さな箱を取り出した。
白いビロードの小箱は、あの雪の日を思い出させる。2人の……いいえ。たくさんの人生を変えた奇跡の日を。
カイがゆっくりとビロードの箱を開くと、中から出てきたのは……
カイのものと似ているけれど、微妙に違う新しいデザインの紋章。
王太子妃の地位を示す鷲の意匠が入ったものだった。
「……水科 桃花さん、私と結婚してください」
プロポーズの言葉は、少しだけ上擦っていて。場所もスーパーと全然ロマンチックじゃないけれど。
2度目の出逢いを果たした場所だから、私たちには相応しかった。
「……はい。よろしくお願いします」
涙ぐんだ向こうでは、きっとカイが微笑んでくれてるだろう。
夜の静寂に満たされた中で、そっと唇を重ねた。



