祝辞や各種表彰、一人一人名前を呼ばれての卒業証書授与。式は滞りなく進み、自分の名前が呼ばれた瞬間はきっと忘れない――。




卒業式が終わった後はそのままパーティーに移行する。その時にはちゃっかりゲストの富士美さんも参加し、美味しいお料理やワインを堪能してた。


「やっぱりここのホテルのお料理は美味しいわね」


ワイン片手にほんのりと頬を染める富士美さんだけど。


「あんまり飲みすぎないでくださいね。まだマンションでのパーティーがあるんですから」

「平気よ~! わたくし強いから」


黒いラメ入りカクテルドレスを着た彼女は、相変わらず美しいけど何歳か判らずに美魔女の雰囲気。ほろ酔い気分なのか、ずいぶん上機嫌だけど。ビジネスに関してはシビアだった。


「……で。桃花ちゃん、決心はしてくれた?」


もう、逃げは許さないわよ~! そんな迫力のある目でジッと見られては、きちんと答えを出さざるを得なかった。


提案されてからこの1年半ずいぶん悩んできたけど。私の力が役立つなら……とやっと決心が固まった。


「はい。私で良ければよろしくお願いします」


ペコリ、と頭を下げた瞬間。富士美さんにがっしりと手を掴まれた。


「そう! やっと決めてくれたわね。大丈夫、食堂の店長は知り合いだから、わたくしからもきっちり話しておくわね」

「こちらこそよろしくお願いします」


そう言った途端に再び富士美さんにラチられ、マンションまでまっしぐらに帰るはめに陥ってしまいました。