「モモカ、連れてきたわ。30分だけだけど……じっくりお話しなさいな」
「あ……ありがとうございます、マリアさん」
「いいのよ。わたくしが出来るのはここまで。後はちゃんと自分の言葉で話すのよ」
マリアさんは気を使ってくれたのか、朱里ちゃんと一緒に遠くの席に座り、オーダーを始めた。
近くに控えているのは、マリアさん付きの女性ボディーガードのみ。たぶん関係者に話を聞かれないように、と努めてくれたんだろうな。
(本当にありがとう……マリアさん)
カタン、とグラスが置かれる音がしてビクッと体が揺れる。カイ王子がお水を飲みきった、と知ると自然に腰を浮かせてデカンターを手に持った。
「お、お水……注ぐね」
「いらない」
ぶっきらぼうな物言いはまさに高宮さん時代そのもので。わずか半月前のことなのに、懐かしくて涙が出そうだった。
「それより、話ってなに? あんまり時間がないから早くして」
……完全に高宮さんモードだ。
ということは、これが素のカイ王子ってこと?
そりゃあ、四六時中他人を演じてるのはキツイけど。ここまで堂々と地を出すなんて、いっそすがすがしいほどだ。
「ふっ……」
思わず吹き出した私に、カイ王子が「何が可笑しい?」と不機嫌さ丸出しで言う。
「だって……カイ王子の地と高宮さんの性格が全然変わらないから……」
「仕方ないだろ。オレには演技力なんざない。外面がいいのは昔からの訓練のたまもので、他はまるで大根だからな」
ムスッと拗ねる彼がかわいくて、笑いが止まらなかった。



