「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
半月ぶりに聞こえた、カイ王子の声。もう聞けないかもしれないから、しっかりと記憶に留めようと目を凝らし耳を澄ませた。
スタッフや店長に挨拶する声すら、いとおしい。
手が届かない人……だけど。
当然、カイ王子がこちらを見ることはなくて。食い入るように彼の姿を見ているうちに、あっという間に最終上映時間がやって来た。
既に会場は満員近くて、カイ王子と側近にボディーガードが入ればぎゅうぎゅうになる。
私も慌ててテントに入り、坂上さんが確保してくれた席に座った。
上映会はくまさんとライオンのキャラがコミカルな動きが面白くて、ここぞという時にみんなから笑い声が聞こえて。私もほっとした。
カイ王子が目指した作品は、大人も子どもも共に楽しめる。更には家族全員で観て楽しめるような。そんなものだったんだ。
感心しながらカイ王子が製作したもう一本の作品を観て、心臓がドクン、と跳ねた。
真っ白な雪景色の中……赤い目をした白いウサギが出てくる短編。氷に閉ざされた世界にひとりぼっちだったウサギが、やがて勇気を持って新しい世界へ足を踏み入れる。
……これって。
私とカイ王子の?
(ううん、きっと偶然だ。たまたまモチーフに使ったに過ぎないよね)
でも……
ウサギが黒い毛むくじゃらの動物に追いかけられたり。そんなに内容が被ることってあるのかな?
(カイ王子……どんなつもりでこれを作ったの?)
これを作ったのはカイ王子が高校生のころ。
訊いてみたいような、訊くのは怖いような。複雑な気分で全てを観終えた。



