身代わり王子にご用心





外見は派手だけど、それほど身勝手なお母さんじゃなくてよかった。


チケットを受け取ってくれたし、お母さんもOKを出してくれたけど。何だか気になる。


13時からの休憩を無理に交代してもらい、少し早い11時45分から休憩に入って、こっそりと催事場に見に行った。


初回上映を観終えたお客さんがまばらに出てくるけど、その顔は面白いものを観た後の高揚感が伝わってくるような笑顔だった。


どうやら、上映会は上々のスタートを切ったらしい。隣に展示された新商品の、アニメを作る玩具に興味を示す子どもさんも多かった。


そこで、すかさず高宮さんがアニメ作りを実演してみせる。


サラサラと2枚の元絵を書いてそれをシートで挟み読み込ませると、中間の動きがトレースされ滑らかなアニメーションとなってテレビ画面に表示される。


更には色をつけたり、写真を読み込んで背景に使えたり。手軽にアニメが作れると知ると、大人の方が興味を持ってお買い上げ、のパターンがあった。


(どうやらプロモーションには成功みたいね)


ひと安心していると、視界の隅に見たことがある親子連れが……美咲ちゃん母娘だ。


美咲ちゃんとお母さんの首もとには、同じ赤いリンゴ型のガーネットペンダントが揺れてる。


私のせいで買えなかった美咲ちゃん親子への、せめてもの償いだった。自己満足にしかならないかもしれないけど。


美咲ちゃんはわくわくしながらテントに入っていき、終了後には心の底から楽しそうに笑いながらお母さんと出てきた。


「あのくまさん、すっごく食いしん坊だね!」

「そう? あんたの父ちゃんの方が本物のクマみたいだったよ」


お母さんも微かに笑っていて……。


2人は仲良くフードコートへ消えていく。


(よかった……これからもお母さんと仲良く暮らしてね)


心がちょっとだけ、軽くなった気がした。