身代わり王子にご用心




「しあわせ? しあわせってなに?」

「怖いがないことよ。いつもご飯が食べられて、ぶたれたりしないの」

「うん、朱里それがいい! 朱里もしあわせがいい。しあわせになりたい!!」


朱里ちゃんはマリアさんにギュッと抱きつき、わあっと思いっきり泣いた。






朱里ちゃんがどれだけ辛い生活を強いられてきたか、は行動の端々から窺えた。


一見無邪気にわがままを言っているように見えても、現実には実現不可能な無茶振りはされない。お菓子を食べる時でさえ「食べていい?」って訊いてくるし。いつも人の顔色を窺っている様子は知ってた。


上から圧迫されていれば、機嫌を損なうまいと必死になることはよくある。私もそうだったから解った。


妙に大人びて諦めがいいと感じたのも、思えばおかしなことだった。


「ほら、ジュリア。チキンナゲット好きでしょう。たくさん食べるのよ」

「朱里ちゃん、サンドイッチも食べない? 美味しいよ」

「うさぎリンゴあげるよ」

「イチゴも食べようね~」

「お稲荷さんも体にいいんだよ」

「チーズ入りハンバーグあげる」

「タコさんウインナーどうぞ」


その後は朱里ちゃんを溺愛する人たちの、朱里ちゃんフィーバー状態になっても責められはしないでしょう。


……たぶん。