身代わり王子にご用心





「朱里のママも……桜花おねえちゃんみたいに、朱里がお腹にいた時にうれしかったのかな?」


これには、誰も何も言えない。「そんなことないよ」なんて下手に慰めようとしても、「じゃあなんでぶたれるの?」って訊かれるだけだろうから。


当事者じゃない以上はどんな言葉を掛けていいのか……。悩んでいると、意外な人が朱里ちゃんに声をかけた。


「ママの気持ちは、ママに訊かないとわからないよ。朱里ちゃんはあんまり会いたくない?」


桂木さんはずっと持っていたビデオカメラをテーブルに置くと、朱里ちゃんに向けたままそう問いかける。


「……ママには……あいたくない」


朱里ちゃんは両手をもぞもぞさせながら、小さな小さな声で答えた。


「ママは……朱里をたたくもん。言うとおりにしないとおこってごはんをくれなかったもん。ママがどろぼうだから、ってようちえんでいじめられたもん!
どろぼうするママなんてきらい! いらないもん!!」


ぽろぽろと大粒の涙を流す朱里ちゃんは、喉をひきつらせながら訴える。


「ママは、朱里をいらない子だって言った! 捨ててきちゃうよって。あんたなんか生まなきゃよかったって!
いらないなら、なんで朱里をうんだの? 朱里をいらないママなら、朱里もママなんかいらないもん!!」


うわぁああっ! と大泣きする朱里ちゃんを抱きしめたのは、マリアさん。彼女は朱里ちゃんの背中をポンポンと叩く。


「ジュリア、もういいの。これからは幸せになりましょう。むかしのことは忘れて、辛かった分、あなたは幸せにならなきゃいけないの」