「すいません、遅れて」
お昼近くになってから、ようやく桂木さんが合流した。午前中にどうしても外せない用事があるから、と言ってたな。
「おっカッツー待ってたよ! 一緒に鳥の道に行こうよ」
藤沢さんはかなり積極的に桂木さんを誘い、自分から腕を取ってぐいぐいと鳥の多いゾーンに進んでいく。桂木さんは困惑しながらも、仕方ないなあって苦笑いで彼女の誘いを受けたらしい。2人はそちらへ歩いていった。
「朱里、おサルさん見たい!」
「そういえば猿山があったっけ。そっちに行こっか~」
高宮さんは生まれも育ちも地元だからか、かなり園内に詳しい。朱里ちゃんのリクエストはほぼそつなくこなしていった。
ただ、全ての要望を叶えたわけじゃなく、わがまま過ぎたり無理なことはきちんと理由を含めて話して聞かせてた。
「わ~おサルさんがいっぱい! あっちでおサルさんが毛をいじってるよ」
「あれはコミュニケーションの一種だよ。人間で言うと会話みたいなものかな」
「え~ホントに? あ、あのおサルさん、まさゆきお兄ちゃんに似てる!」
朱里ちゃんが指さした先にいたサルは、顔が真っ赤ででろ~んと寝そべりやる気がなさげだ。
「たしかに、やる気のなさとか脱力感がマサユキそっくりね」
「ちょ、マリアさんひどい! ぼくだってぼくだって、一生懸命生きてるんだよ~よよよ」
「いちいち泣かないでよ、みっともない」
「え~ん!マリアさんが冷たいよぅ」
「まさゆきお兄ちゃん、みっともないよ~」
「わぁん~朱里ちゃんまでバカにするう!」
何だかんだ言って高宮さんはいじられキャラらしい。泣き真似をして更に弄られるのをほのぼのと見ていた。



