「私は……好きでいてもいいのかな?」
「そんなの、誰かの許可なんて必要ないでしょ?
それより……わたしはお姉ちゃんがやっと大切な人と出会えてよかったと思ってる」
「桜花……」
「お姉ちゃん、本当に頑張ってたの私知ってる。私の学芸会のために、慣れない裁縫を徹夜でして衣装を仕上げてくれたり。残業もたくさんして、夜遅くまで頑張ってたでしょ?
熱があっても無理に出勤して……どれだけ感謝してもし足りないよ」
桜花はくるり、と身体を反転させてにっこり笑った。
「私はお姉ちゃんのお陰でちゃんと大人になれたし、もう大丈夫だから。これからは自分の幸せのためだけに生きて欲しいんだ。わたしも、応援するから」
……だから、と桜花は私にこう告げた。
「カイ王子に、ちゃんと自分の気持ちを告げてあげて。彼だって憎からずお姉ちゃんを想ってるはずだから」
……桜花はカイ王子に会ったことがないはずなのに、なぜ知ってるように話すんだろう?
そんな疑問に答えるかのように、桜花は訥々と話す。
「お姉ちゃんは知らなかっただろうけど……カイ王子はうちに来たことがあるの」
「えっ?」
驚く、どころか。衝撃に近かった。カイ王子が我が家へ来てた?
「そ……それはいつ?」
「お母さん達が生きてる時だったよ。まだわたしもちっちゃくてあんまり憶えてないけど。お母さんが教えてくれたんだ」
でも、と桜花は不思議そうに言う。
「カイ王子が来るのは決まって夜だった記憶はある。お姉ちゃんが寝た後だったかな」



