慕ってくれる後輩を裏切ってる現実が、ひどく心を苛む。
ベッドの上で身体を起こしたついでに、ベッドサイドテーブルに置いたリモコンに手を伸ばす。
シーリングライトの光量を上げて明るくし、昼白色程度の色にすると。ベッドサイドテーブルの引き出しにしまった冊子を取り出した。
就職情報誌と賃貸物件の情報誌。どちらもコンビニやスーパーで無料で貰えるものだ。
付箋紙を貼っておいたページを開くと、もう一度じっくり読み込んだ。
……駅前徒歩15分のアパート。築20年。1Kで月に3万5千円。共益費月に3千円。修繕積立金月に2千円。 トイレとお風呂はユニットバスになるけど、一応ついてる。
(月に4万の家賃なら……まだ払えないことはないな)
敷金礼金ゼロはありがたい。引っ越す費用を考えたら、敷金礼金が必要だと予算が足りなくなる。
(桜花の結婚資金に貯めたお金に手をつけたくないもんね)
富士美さんへの支払いだってまだだし。費用はなるべく少なく済ませたい。
駅前に近いアパートから徒歩5分圏内で、折よく従業員を募集してる食堂があった。家庭的な惣菜やお料理を売りにしているお店で、私も何度か足を運んだ経験がある。
条件を見たら高卒も可能だし、調理師資格修得の支援もしてるみたいだ。お給料は今より少し減るけど、賄いもつくし。食費が浮くなら助かる。
(明日が休みだから……面接に行こうか)
早く、次の職と住みかを見つけてここを出ていこう。私がいなくなれば、きっと桂木さんも目が覚めるはずだから。



