「最初、カイは絵本を眺めたり絵を描くのが好きなような、内向的な子だったの。
だから、わたくしとマサユキでよく外に連れ出したわ。
怖がってよく泣いたけれど。その内に自分から行動をするようになって。姉離れした時は寂しかったわ」
マリアさんの話しぶりは本当のきょうだいに向けるような、温かいものが満ちていて。とても異性へ対する恋心のような熱さを感じない。
(じゃあ……マリアさんがカイ王子を好きってことはないんだ。だけど……)
その逆、カイ王子がマリアさんを好きな可能性は否定出来ない。
「でも……か、カイ王子がマリアさんを……す、す……好きということだって……」
「それは、ないわね」
バッサリとマリアさんは可能性を否定したけれど。どうしてそう自信たっぷりに言いきれるんだろう?
「なぜですか? それこそ本人に訊かないと解らないようなことですよ」
カイ王子はマリアさんが好きなんですよ! と伝えたくてたまらない。寝言にまで名前を出すほど、寝ぼけて勘違いするほど恋い焦がれているんだって。
「それがね。本人に直に訊いたことがあるのよ。あちらのパパラッチにスクープされそうになったし。
けど、はっきり否定したわ。いっそすがすがしいほどにね。
“僕には好きな人がいるから、マリアをそういった対象に見れない”……って。
あの時マスコミはカイのお相手探しに躍起になったけど、カイの口が固かったし修行僧のような健全な生活をしてたから。結局立ち消えになっていったわね」



