以前は否定していたけど。やっぱりマリアさんはカイ王子にも特別な感情を持っているんじゃあ……なんて。拭いきれない猜疑心が湧いてくる。
「あ……あの。カイ王子とは幼なじみだったんですよね? 曽我部さん達からは、オーストリア出身と聞いたんですけど」
やめて、と思うのに。口が勝手に探ろうとしてしまう。マリアさんとカイ王子の本当の仲を。
こんなの……駄目だ。
私はカイ王子の恋人でもないのに。どうして止まらないんだろう。
けれども、マリアさんは不愉快さを出すどころか。なぜか楽しそうに笑った。
「ああ、気になるのね。いいわ、教えてあげる。
たしかにわたくしはオーストリアウィーン出身だし、そちらの学校に通ったけれど。長期休暇のたびに両親がヴァルヌスの別荘に滞在したから。近くにあった離宮にいた男の子……つまりカイ王子と自然と仲良くなっただけよ」
「きょうだいのように育ったんではなかったんですか?」
尚も追及する失礼な私。嫉妬しているのがバレバレだ。自分でも嫌になるのに、全てが知りたくて仕方ない。
「そうよ。3つの頃からたった2ヶ月とはいえ毎年の夏の間を一緒に過ごしたんだもの。
そして、ね。5つになってからマサユキが加わったかしら。 ニホンからわざわざヴァルヌスまで避暑に来て、そこで私と知り合ったの」
カチン、と茶器がぶつかる音がする。
「カイは最初に会った時に女の子みたいでね。弟ができた気持ちになったわ。わたくしにはきょうだいがいなかったから」



