身代わり王子にご用心






出勤してロッカーで着替えていると、ポンと背中を叩かれる。振り向けば、坂上さんが心配げな顔をしてた。


「また1週間寝込むなんて、質が悪い風邪を引いちゃったのね。もう大丈夫なの?」


(風邪って……というか、ある意味確かに1週間ずっとベッドの上でしたけど)


カイ王子との密事を思い出しそうになり、カッと顔が熱くなる。


(カイ王子の、バカ! スケベ!!)


内心でカイ王子に八つ当たりしながら、何とか笑顔を作ってみる。


「はい、ご心配を掛けてすいません。もうすっかり回復しましたから」

「なら、よかった。それじゃあ、ちょっとお昼の時にいいかしら? 私は13時からなんだけど」

坂上さんが声を潜め、周りを気にしながら私に訊いてくる。改まった話なのかな? と気になってスケジュールを思い出しながらすぐに頷いた。


「はい。私も13時からの休憩なので大丈夫です」

「なら、今日はちょっと外に出ましょう。隣にある喫茶店でいいかしら?」

「あ、はい」


承諾すると、ホッとした様子の坂上さんが「じゃあ1時に」と先にロッカールームを出る。なんだろう? と首をひねりながら私も後に続いた。