「本当に、カイのことが好きなのね」


マリアさんの指摘に、ハッとなって手のひらで涙を拭った。


気づかれちゃ駄目! マリアさんはカイ王子の恋人だったんだし、今もカイ王子の想い人。


何より、私の気持ちが知られてはいけない。こんな異国の平凡な女が想いを寄せるなんて。王子にも迷惑だし、身の程知らずと呆れられる。


「えっと……茶葉はキャンディでいいですよね? 私、これが好きなんですよ。名前もかわいいし」


なるべく明るい笑顔を作れるように努めて、その話から逸れるように願う。お願いだから、それ以上私を惨めにさせないでください。


だけど、マリアさんは容赦なく核心に踏み込んできた。


「隠さなくていいの、モモカ……と呼んでいいかしら?
あなたの気持ちはパーティーの時から気づいてたもの」


マリアさんがパーティーというのは、葛城グループの創立記念パーティーのことだろう。確かにあの時マリアさんも会場に来ていた。


「あ……あの……なぜ、私を?」


私は遠くからマリアさんを見ただけだし、直に関わっていない。ましてや彼女は私と違ってたくさんの人に囲まれてた。壁の花に等しかった私程度に関心を持つとは思えなかったけど。


「ああ、そんなに落ち込まないで。最初は単にカイがどんなパートナーを連れてきたか興味があっただけ。
けど、私はあなた達を見て解った。
お互いにすごく想いあってて、理想のカップルなんだって」