身代わり王子にご用心




食事は全てルームサービスだし、それでもベッドの上でしか食べるのを許されない。


一度外に出ようとしたら、気を失うまで散々攻められたし。何より、護衛らしき黒服の厳つい人がドアの外に立ってて出られませんでしたが。


1日に許される自由はシャワー(それでも大体は一緒に入ることを強要される)と、トイレと睡眠くらい。


睡眠だって、カイ王子の気分次第だし。


それ以外はベッドの上で良いように弄ばれてる。


……なんで、こんなことになったんだろう?


カイ王子は……私が嫌いじゃなかったの? ずっとそっけなく冷たかったのに。


それに……


マリアさんは?


たとえ仮のカイ王子とマリアさんが恋人だとしても、カイ王子がマリアさんを好きだったのは紛れもない事実だったはず。


私をこうして好きに抱くのは……もしかして、身代わりなんだろうか?


マリアさんが既に心変わりしているのを知って、晴れない気持ちをいちばん手近な女で慰めた……。


それが、一番しっくり来るような気がする。


でなきゃ、私をこうして抱くわけないもんね。


きっと、荒れて一時的におかしくなってるだけなんだ。


だからきっと、普通に戻れば捨てられる。それだけのこと。


(でも……)


こんなバカな立場なのに、喜んでる自分がいた。


飽きたら捨てられると決まってるのに。それでもいいからその間だけでもそばにいたい、って。


何の生産性も将来もないのに。解ってはいるのに。


大好きなこの人の慰めになるなら、それでも構わないって。


きっと、後悔すると解ってても。どうしようもなかった。