身代わり王子にご用心








「Wie geht es Ihnen?」

「だ……Danke gut」

「Ja……だが。50点、だな」


うう……採点が厳しい。


いきなりドイツ語を話せ、と言われても無理です。まだ基礎すら怪しいのに。


それに……


「あ……あのぅ」

「……なんだ?」


何だって。この状況をおかしいとは思わないんでしょうか、この王子様は。


まぁ、もともとフリーダムな人だったから。今更驚きはしないけど。


けど、それにしたって……。


「あの……ですね。なぜ、私がたかみ……カイ王子の膝に座る必要があるのでしょう?」

「なぜだ? この方がよく発音が聞こえるだろう」


もと高宮さんであるカイ王子はそうおっしゃって、私の腰に回した腕に力を込めて更に近くに抱き寄せられますけど……。


問題は、それ「だけ」じゃない。


「あの……それならせめて、服を着させてください。それとベッドの上では……」


こちらが話している最中というのに、カイ王子の指先が身体にイタズラを始めた。


もう何日、こうしているんだろう。


当然仕事は無断欠勤になっているだろうに、カイ王子は連絡を入れることすら許してくれない。


事情を説明しようとせめて藤沢さんに、と電話をしようとしたら携帯電話を取り上げられてしまってた。